インボイス制度は、令和5年10月1日から導入される制度です。
インボイス制度ってなに?
なんで賃貸業をしてるけど影響があるの?
いったい不動産賃貸業の大家さんにどのような影響があるのかをこの記事では解説します。
インボイス制度とは
インボイス制度とは、消費税に関する制度の変更です。
インボイス=税率や税額が記載された請求書
インボイス制度では、『適格請求書』と呼ばれています。
インボイス制度では適格請求書発行事業者登録制度が創設され、消費税の課税事業者には登録番号が附番されます。
免税事業者であっても適格請求書発行事業者に登録することが可能ですが、その場合には課税事業者になってしまいます。
登録しなければ適格請求書が発行することができません。
適格請求書を発行するためには、2023年3月1日までに申請をする必要があります。
免税事業者の大家さんは、仕組みを理解してインボイス制度の対策を早めに検討しましょう。
免税事業者の場合は、どこにあてはまるのかを考えて対策を検討しましょう。
賃貸収入の状況 | 対策と影響 |
家賃収入のみ(非課税売上のみ) | 影響あり 対策不要 |
事務所、テナント収入あり(免税事業に賃貸) | 影響あり すぐには対策不要 |
事務所、テナント収入あり(課税事業者に賃貸) | 影響あり 早めに対策検討 |
不動産賃貸業においての課税になるものと非課税のもの
不動産賃貸業においては、課税されるものと非課税のものがあります。
他の事業とは異なり不動産賃貸業において、メインになる売上の家賃収入は非課税にあてはまることが多いのです。
課税売上になるもの
下記のような売上が課税売上になります。
1ヶ月未満の短期賃貸での家賃収入
課税事業者への店舗や事務所などの賃料
駐車場の賃料
太陽光発電収入
アンテナ基地局の収入
建物の売却収入
水道代(税率10%)※水道代は軽減税率は適用されません。
非課税売上になるもの
下記のような売上は非課税になります。
居住用の住宅の賃料(1ヶ月以上の賃貸)
家賃に含まれる駐車場の賃料
土地の売却収入
地代家賃
駐車場だけわかりにくいので注意点を記載してます。
駐車場については、以下の条件で非課税になります。
入居者に1部屋につき1台づつの駐車場が割り当てられていること
入居者の自動車の保有の有無にかかわらず駐車場が割り当てられていること
家賃のに含まれていること
駐車場のオーナーが免税事業であること
インボイス制度が導入でどうなるの?
インボイス制度が導入されると適格請求書でなければ、仕入控除ができなくなることです。
下記が仕入控除に図になります。

660円で仕入して消費者に880円で売る場合には、仕入たときの60円が課税仕入になります。受け取った消費税80円から60円を引いた20円を税務署に納めます。
しかしインボイス制度が導入されると適格事業者でなければ60円が引けなくなります。
経過措置は下記のとおりになります。その期間は課税仕入に対して控除割合が適用されます。
期間 | 控除割合 |
令和8年9月30日まで | 80% |
令和11年9月30日まで | 50% |
不動産賃貸業に大家さんにかかる影響
さまざまな状況があるかと思いますので状況別に説明していきたいと思います。
家賃収入のみの場合
不動産賃貸業を個人でしている人は、免税事業者が多いと思います。
売上のほとんどが、家賃収入の場合には非課税売上のために課税売上が年間1,000万円以上にはなかなかならないからです。
家賃収入しかないから関係ないと安心してはいけません。なぜなら投資した物件の建物には消費税があるからです。
売却時に適格請求書を発行できなければ値引き交渉される可能性があるということです。
事務所、テナントなどがあるが免税事業者に貸している場合
まずは、今の賃貸借契約書を確認しましょう。
事務所はテナントに対して消費税として請求している場合には、貸している人が免税事業者であってもインボイス制度の導入によって課税事業者になる場合には、適格請求書を求められる可能性があります。
できる対策としては、更新時に賃貸借契約を変更しておきましょう。
事務所、テナントなどあり課税事業者に貸している場合
適格請求書が発行できなれば、消費税として請求していた分についての交渉になる可能性はあるでしょう。
もしテナントを税込11万円で請求していたのであれば経過措置期間は消費税1万円の80%は課税仕入に認められるので残りの20%の2,000円については減額で対応するかなにかを考えておく必要があります。
対策としてはインボイス制度と同時に適格請求発行事業者になるか、もしくは減額請求されたときには対応していくかなどを考えておく必要があるでしょう。
法人化のメリットが少なくなる
今まで個人オーナーが課税事業者で資産管理会社が免税事業者の場合、個人の不動産を資産管理会社に委託し資産管理会社から個人オーナーに対して請求して仕入税額控除していた場合には、そのメリットがインボイス制度でなくなってしまいます。
インボイス制度導入によって課税仕入にならないので、法人化のメリットが少なくなってしまいます。
課税事業者になる場合の注意点
インボイス制度に対応して課税事業者になる場合において注意点があります。
それは不動産賃貸業の仕入れ控除が全額できないからです。
課税売上割合というのがありますので注意してください。不動産賃貸業の場合には課税売上割合が低くなることが多いので簡易課税のほうがメリットがある場合には簡易課税を選択しましょう。
課税売上割合
消費税は課税売上割合によって、課税仕入の控除できる割合が決められています。
家賃収入などの非課税売上が多いのであれば、課税仕入の控除は割合は低くなってしまいます。
課税売上が95%の場合には、全額課税仕入の控除ができますがアパートやマンションを貸している場合にはなかなか95%にはならないでしょう。
以下の計算で仕入控除の割合が決まっています。
課税期間中の総売り上げ÷課税期間中の課税売上=課税売上割合
年間400万円の家賃収入と別にテナントの賃料が年間100万円の場合の課税売上割合は500÷100=20%になります。
課税売上割合が20%としたら消費税の支払いが50万円あったとしても控除できる額は10万円しか控除できません。
簡易課税
消費税の計算方式には簡易課税制度という特例があります。
事務的な負担を減らす軽減措置で各業種によって決められた『みなし仕入率』を使って計算します。不動産賃貸業は、第6種事業にあたり『みなし仕入率』は40%になります。
50万円の消費税の支払いの場合に控除できる額は20万円になります。
基準期間(前々年または2期前)の課税売上が5,000万円以下の場合には消費税簡易課税制度選択届出書を届ければ簡易課税を選択できます。
一度、変更した場合には2年間は変更できませんのでしっかり将来の計画を立ててから変更してください。
不動産を売却するなどの場合には、極端に課税売上割合が変わってしまいます。
投資不動産を買い替えしていくときには簡易課税が損するケースもあります。
すでに課税事業者の場合
すでに課税売上が1,000万円を超えて課税事業者になっている場合には、2023年3月31日までに税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を申請しましょう。
届け出しておくことにデメリットはとくにありません。
郵送や電子申請も可能なので早めにすませておきましょう。
郵送の場合の送り先税務署ではなくインボイスセンターになります。
郵送先はこちら⇒申請手続|国税庁
最後に
不動産賃貸業で家賃収入しかないから関係ないわけでなく影響はあります。
売却時には、適格請求書を求められたりなどすべての不動産の大家さんにかかわってくることなのでしっかりと理解して対策をしましょう。