営業マンから収益物件をサブリースすれば30年間安定した収入で安心など聞いたことがある人もいるでしょう。
一括借上げで安定した収入や安心などと言った甘い言葉には裏があります。
冷静によく考えてみましょう。
サブリース業者も利益がなければする意味がありません。
サブリースはさまざまな事件やトラブルにもなっています。
この記事ではサブリースでのメリットやデメリットなどを解説しています。
サブリースとは
サブリース契約とはサブリース業者に対して収益物件の所有者が一括で貸してサブリース業者が入居者と転貸借契約をする仕組みです。
通常の場合には所有者と入居者での2年更新の賃貸借契約のみが一般的です。
サブリース契約には、所有者とサブリース業者と間で取り交わすマスターリース契約とサブリース業者と入居者との間で取り交わすサブリース契約とがあります。
一般的には両方ともあわせてサブリースと呼ばれています。
収益物件の管理方法は自分で管理する自主管理と管理会社に委託する管理委託とサブリース業者に一括で貸すサブリースと3種類あります。
金銭的な負担が軽い順番でいくと自主管理、管理委託、サブリースの順番になります。
労力的な負担はその逆でサブリース、管理委託、自主管理となっています。
マンション一室からでもサブリースする不動産会社はあります。
サブリースは一括で借り上げてもらえるので労力的な負担は少ないですがメリットとデメリットがありデメリットが大きいので注意しましょう。
サブリースのメリット

サブリースでのメリットをまず紹介していきたいと思います。
安定した家賃収入を得られる
サブリースの場合には、入居者の有無に関わらず一度マスターリース契約した賃料が毎月入ってきます。
入居者の滞納があったとしても契約しているのはサブリース業者との契約なので、その点に関しても問題ありません。
滞納などの不安などからは解放されます。
通常の場合は、満室想定の家賃収入の70%~90%程度が保証額になります。
空室の賃料は周辺などの相場から計算されます。
満室の場合に100万円の家賃収入であれば70~90万円程度が保証されます。
入居率の悪い地域では保証額がさらに下がることもあります。
自身で経営するかサブリースを活用するかは収支シミュレーションして計算して比較しましょう。
もしサブリースする場合にはさまざまな業者があるのでしっかりと調査してしっかりと信頼関係を築くことができる業者を選びましょう。
管理業務が不要
サブリース契約の場合には自主管理と違い、入金確認や集金、クレーム対応、契約更新、建物メンテナンス等さまざまな管理業務をすべて代行してやってくれます。
クレームなどの解決は経験や知識のあるサブリース業者が対応します。
月に1度のサブリース業者からの入金だけを見ておけばいい点では気軽です。
確定申告などでもサブリース業者との契約だけなので手間がかからない点はメリットになります。
入退去にかかる費用が不要
収益物件の場合には入居者が退去した場合にはリフォームしなければいけません。
サブリース契約によっては部屋のリフォームなどはサブリース業者が負担してくれるケースもあります。
また入居者を募集するのにも広告料などの費用も自主管理であれば必要な費用になりますが、こちらも負担してくれるケースが多いです。
その場合には礼金はサブリース業者に収入になることが多いです。
いちいち内装工事の見積もりをみたり家賃設定などを考えなくていい点はメリットになります。
相続税対策になる
サブリース契約をしていると相続税対策になります。
相続税の評価は人に貸していると建物や設備が劣化しているということで資産価値が低いと評価されます。
逆に空室率が高い収益物件の場合には評価が高くなってしまいます。
サブリース契約の場合ではすべての部屋を貸しているということで資産価値が低く評価され相続税対策になります。
計画的にサブリースすることができれば相続税対策にもなります。
サブリースのデメリット

サブリース契約はメリットばかりを説明されて契約して後悔することはよくあるケースです。
サブリース契約はメリットもあればデメリットもありますのでしっかりとデメリットを把握したうえで検討するようにしましょう。
収益性が下がってしまう
安定した家賃が得られる変わりに家賃の保証額は70%~90%が相場なので収益性が下がってしまいます。
家賃収入の10%以上は手数料が必要になってきます。
本来100万円の家賃収入がある物件でも手数料が引かれてしまい収益性が下がってしまいます。
安定した家賃収入が見込める物件であれば管理委託を選んだほうが収入は多くなるでしょう。
設備更新の費用は必要
サブリース契約をしっかり見ておく必要があります。
エアコンや給湯器などの設備は所有者負担での修繕になっているサブリース契約が多く設備に関する修繕の負担はしなければいけません。
収益性が下がっているうえに設備の修繕負担が必要になればさらに収益性が下がってしまいます。
家賃の減額請求される
安定した家賃の収入も契約してから一定期間がすぎるとサブリース業者から家賃の減額請求を言われることがあります。
サブリース契約の家賃保証額は永遠に保証してくれる収入額ではないので気をつけましょう。
家賃を下げなければ入居者が集まらなくなってくるとサブリース契約の家賃に関しても減額されることが一般的です。
しっかりと契約する前に将来どんな理由で減額になるかなどは質問しておきましょう。
解約されることがある
サブリース業者も儲からない物件であれば解約してくることもあります。
儲かっていない状況で解約されてしまうと自分で入居者を見つけなければいけなくなります。
サブリース契約が解約されて時に入居者があまり入ってなければ、自身で入居者を集める努力が必要になってきます。
サブリースしていても常にどのような入居状況なのかは確認するようにしましょう。
入居者を選ぶことができない
サブリース契約では入居者を選ぶことはできません。
サブリース業者に転貸借の許可をしているので入居者選びはサブリース業者がします。
ある程度はサブリース業者も審査はしますが、万一サブリース業者が選んだ入居者がトラブル発生して資産価値が下がってしまってもどうすることもできません。
免責期間が設定されることがある
免責期間とは家賃の保証をしない期間です。
退去から3ヵ月は免責期間など設定されていたならば、退去後の3ヵ月間は家賃保証額から減額されてしまいます。
入居者が決まったとしても免責期間は無料で貸すことになる制度です。
安定した家賃収入が魅力的であったのに免責期間があると自主管理と変わりありません。
しっかりと契約前には確認するようにしましょう。
大規模修繕費用はオーナー負担
外壁塗装などの大規模修繕費用はオーナー負担のサブリース契約が一般的です。
原状回復工事についてもオーナー負担になっているサブリース契約もあるので工事の修繕負担はどちらがするのかは契約前にしっかりと確認する必要があります。
工事負担や免責期間などサブリース業者に有利な契約であればサブリースするメリットはあまりありません。
売却査定が低くなってしまう
サブリース契約中であれば収益物件の売却金額の査定が低くなってしまうことがあります。
サブリース契約をしていることで収益性が下がってしまっていて利回りに影響して売却価格に関しても下がってしまうことがあります。
いざサブリース解約しようとしても正当な事由なく一方的には解約できなくなっているケースがあります。
事前に契約内容を確認しておかなければサブリース契約を継続するしかなく将来売却できなくなってしまう恐れがあります。
サブリース契約と言えど借地借家法が適用され賃借人保護が基本的な法律があります。
貸主は不利なことが多いことを理解しておきましょう。
契約する前に違約金など解約条項についても確認しておく必要があります。
最悪の場合、収益性も悪くなってきてサブリース契約も解約できずに安く売却するしかないみたいになってしまっては後悔しかありません。
サブリース業者が倒産するリスク
サブリース業者が順調であれば問題ないのですが、万一倒産などしてしまった場合には家賃収入が入ってこなくなります。
遅れて家賃が入金されるようになった場合には注意しましょう。
1ヶ月分でも家賃収入が入ってこなくなれば大きな損失になってしまいます。
サブリース契約でのチェックポイント

サブリース契約する場合において必ず見ておく必要があるポイントを紹介します。
口頭でメリットばかりの説明があったとしても一度冷静に契約書のすべて目を通してから契約するようにしましょう。
デメリットについてもしっかり説明してくれない業者との契約はできるだけやめておいたほうがいいでしょう。
保証賃料
まず確認する必要があるのが保証賃料です。
どれくらいの保証賃料を設定してくれるのかを確認しましょう。
満室の家賃収入の70%~90%程度に設定されることが多いです。
90%保証してくれるのであれば良い設定になりますが他の条件なども見ておく必要があります。
修繕などの負担
サブリース運用期間中の原状回復などの負担はどちらが費用負担するのかを確認しておきましょう。
修繕だけに限らず募集費用に関してもオーナー負担の場合もあります。
どこからどこまでがオーナー負担であるかを確認しておかなければ契約したあとから思ってもいない請求をされることがあります。
免責期間など
免責期間などの設定があるのか、ないのかを確認しましょう。
もともと立地条件も良くてすぐに入居が決まるような収益物件であれば免責期間の分だけ損してしまいます。
免責期間もあり募集費用もオーナー負担であればサブリースの保証賃料が高くてもあまり魅力的ではありません。
契約期間
サブリースの契約期間も確認しましょう。
更新条件なども家賃の減額請求できるようになっているのが一般的ではあります。
何年ごとに賃料の見直しなどがあるのかなどを把握しておきましょう。
解約について
解約については必ず確認しましょう。
最大のデメリットはこちらからは正当事由がなければ中途解約できないことが多いのです。
すぐに解約できない場合にはトラブルに発展する可能性があります。
解約の場合にはどのくらい前に告知する必要があるのかまたどのような条件で解約できるかなどの具体的な手続きを確認しておきましょう。
サブリース契約は借地借家法の存在があり借主保護されるので気をつけましょう。
サブリース業者から解約はしやすいがオーナーからは解約しにくい場合が多いのです。
サブリースの事件

サブリースして失敗した事例をいつくか紹介したいと思います。
失敗した事例を学ぶことで失敗する可能性を減らすことができます。
セミナーなどでサブリースを勧めてきたら気をつけましょう。
かぼちゃの馬車事件
2018年に世間を騒がせた事件です。
株式会社スマートデイズが展開していた女性向けのシェアハウスのサブリース事業です。
30年間の家賃保証があるということで魅力的で約700人もの不動産投資家が融資を利用して被害にあわれました。
家賃は入金されずに返済に困った不動産投資家は自己破産などに陥ってしまいました。
残念なことに自殺者まででてしまいました。
スルガ銀行も適切な融資判断ではなく不正融資をしていたために物件価値の倍以上の融資がされていたために売却することもできないという悲惨な状況になってしまいました。
長い年数が経過した今も争っています。
この事件の教訓としていくつか注意点を紹介しておきます。
サブリースの家賃保証
サブリースでの家賃保証期間ですが、未来はどうなるか誰もがわかりません。
30年前に今の時代を予測できたでしょうか?
たしかに長期的に安定という言葉はだれもが魅力的に感じてしまうでしょう。
企業の生存率調査では10年で約10%しか生存していないというデータがあります。
当社はそのようなことはありませんと言われても未来はだれもわかります。
そもそも安定的な収入を目指すのであれば企業に任せないほうが近道かも知れません。
不正融資
金融機関が多額の融資をした点です。
融資をしてくれるのであれば大丈夫だろうと思ってしまった点が気をつけないといけなかった部分だったのかも知れません。
多くの不動産投資家は金融機関が融資してくれて安定的な収入が見込めるということで購入してしまったことでしょう。
金融機関はあくまでお金を貸してくれるところです。
収益物件はすべては需要がある物件かどうかを判断することが基礎的なポイントです。
CMというブランド
かぼちゃの馬車はCMが流れていたことでブランドとして魅力的に見えてしまった部分があります。
服や車などと違い住環境においてブランドがあるから住みたいと思うことはないとまでは言えませんがそこまで重要視される点ではないのです。
やはり立地や設備などが不動産の選ばれるポイントなのです。
CMが流れているから人気と勘違いするのは危険です。
レオパレス21事件
こちらもサブリースで問題になりました。
レオパレス21もCMなど流れていてブランドとして魅力的に感じてしまった人もいるでしょう。
こちらも多くの人が自己破産になりました事件です。
サブリースの家賃保証
30年家賃保証といって田舎の土地に新築アパート建築をするように提案されて何年後かに大幅な家賃の減額請求されたという内容です。
大幅な賃料の値下げで赤字になり建物を建てたローンが返済できなくなってしまう人がでました。
さらに施工不良の問題もありレオパレス21の物件は人気がなくなってしまいました。
サブリースの家賃保証は減額されないというわけではありません。
サブリース業者は損しないような仕組みになっているのです。
安定な収入を求めるのであれば言われたことを鵜呑みにするのではなく自分自身でさまざま情報収集して判断するようにしましょう。
サブリーストラブル事例

サブリースでのトラブル事例を紹介していきます。
どのようなトラブルが実際にあったかを紹介しますので参考にしてください。
サブリース会社が倒産
サブリース会社が倒産して家賃が入ってこないというトラブルは多々あります。
もし倒産した場合には、早めに動く必要があります。
入居者の連絡先がわかっている場合にはすぐに契約を交わして家賃の振込先を変更してもらう必要があります。
入居者は倒産を知らずに倒産した会社に家賃を振込する可能性があります。
そうなってからでは遅いのですぐに連絡する必要があります。
サブリースで入居者情報がわからない場合にはポスト投函などしてすぐに連絡してもらうようにしましょう。
サブリース会社が倒産した場合の賃料は事例ではほとんど回収できておりませんのですぐに対応する必要があります。
サブリース会社が一方的に解約
サブリース会社は儲からないと思えば一方的に減額請求や解約などをすることがあります。
減額請求された場合には収益性が下がってしまいます。
また解約される場合にはすでに入居率が悪くなってしまっている可能性が高いです。
減額や解約などは物件の状況が悪化していることが多くさまざまな問題点がでてくることが多いのです。
サブリースしているからとなにも気にせずにいると急に解約されてしまっては困ってしまいます。
サブリースしていても状況確認をしておくことでいざ解約されても対応することができるでしょう。
サブリース物件の売却

サブリース契約をしたままで収益物件を売却したいと思う事もあるでしょう。
サブリース契約したままでの売却について紹介していきたいと思います。
サブリース契約している物件は売却しにくい
サブリース契約している収益物件は売却しにくいです。
なぜならサブリース契約自体が所有者にとって不利な契約になっていることが多くまたなかなか解約ができない契約なのです。
購入希望者はサブリース契約を引き継がなければならず不利な契約を引き継いでまで購入したいと考える人は少ないのです。
売却を考えるのであれば一度サブリース契約を解約してからのほうがいいでしょう。
サブリース業者に伝える必要はない
サブリース契約したままで売却する場合には、わざわざサブリース業者に対して売却することを伝える必要はありません。
サブリースしてない場合にわざわざ入居者に売却することを伝えることはないのと同じです。
解約してからの売却
少しでも高く売却したいと思う場合にはサブリース契約を解約してからの売却になるでしょう。
ただ解約するのにどのくらい前に通知する必要があるかを確認しなければいけません。
また違約金などもないかなど総合的に判断する必要があります。
解約するには3~6ヵ月前ぐらいが一般的なので売却を考えるのであれば早めにサブリース契約をどうするかを判断しましょう。
サブリース新法

あまりにも被害が多いのかサブリースに関する新法が2020年12月15日に施行されました。
重要事項説明など受けていない場合は違反業者なので気をつけましょう。
サブリース新法とは
規制の対象者はサブリース業者(特定転貸事業者)及びサブリース契約を勧誘する勧誘者に対してとなります。
- サブリースを勧誘する時や契約締結する前に重要事項説明を行う必要がある
- 誇大広告や不当な勧誘の禁止
- 違反したものは業務停止処分や罰則が科せられる
重要事項説明を行う必要がある
下記のような内容を記載した書面を交付して説明しなければいけません。
IT重説も可能になります。
- マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、名称又は氏名及び住所
- マスターリース契約の対象となる賃貸住宅
- 契約期間に関する事項
- マスターリース契約の相手方に支払う家賃の額、支払期日、支払方法等の条件並びにその変更に関する事項
- サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
- サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項
- マスターリース契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項
- 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
- 責任及び免責に関する事項
- 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
- 転借人に対する(5)の内容の周知に関する事項
- マスターリース契約の更新及び解除に関する事項
- マスターリース契約が終了した場合におけるサブリース業者の権利義務の承継に関する事項
- 借地借家法その他マスターリース契約に係る法令に関する事項の概要
誇大広告や不当な勧誘
誇大広告とは実際よりも優良と見せかけて相手を誤認させる「誇大広告」のほか、虚偽表示により相手をだます「虚偽広告」についても該当します。
広告媒体に関してはチラシ、新聞、HP、テレビ、ラジオ等種類などは問いません。
違反した場合の罰則
違反した場合の罰則ですが、業務停止処分などが課せられるようになります。
また6か月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金、またはこれを併科にも課せられます。
新法が施行されるまでは規定がありませんでしたが新法により明確化されました。
契約後のトラブルの相談窓口

サブリースでなにかトラブルになってしまった場合の相談窓口を紹介しておきます。
トラブルにあった場合には一人で悩まず相談する手段を取りましょう。
平成30年3月27日:公表 平成30年10月26日更新:金融庁・消費者庁・国土交通省
アパート等のサブリース契約を検討されている方は契約後のトラブルにご注意ください!
最後に

サブリース契約には十分に注意しましょう。
特に長い期間安定した収入が確保できるなどは現実的に考えてないので気をつけましょう。
サブリース契約で多くの方が損しています基本的にはサブリース業者が損しないような契約になっています。
冷静に考えたらわかるようにわざわざ損する契約を業者はすることはありません。
国土交通省・消費者庁・金融庁からも資料が公表されているようにそれだけ被害にあわれているかたが多いのです。
もしサブリースを考えるのであればいったんは管理委託でもそこまで手間が必要でないので管理委託する方法も考えましょう。
一度契約するとなかなか解約しにくいのがサブリース契約です。
簡単に契約してしまってからでは後悔してもしかたありません。
またサブリース付きでの収益物件の販売などは十分に注意する必要があります。
そもそもそこまで保証があるのであれば業者が購入しないのもおかしいのです。
不動産の場合には高額な取引になることが多いので一度失敗すると大きな損失になりかねません。
一度の失敗が原因で人生が狂う可能性もあります。
しっかりとさまざまな人と相談してから依頼するか決めるようにしましょう。
結論としてはサブリースするメリットがあるとすれば相続の時期に相続税対策の時に短期的にサブリースするぐらいでしょう。